お見合いだけど、恋することからはじめよう
「……たとえ、お見合いがきっかけだったとしても、今の彩乃さんからは『しあわせ』しか感じられませんよねぇ」
あたしは誓子さんにささやいた。
「そりゃあ、婚約していよいよ結婚、っていう今が、一番楽しいときだからよ」
誓子さんはいつもの「誠子さん」を取り戻して、にべもなく言った。でも、もうそこにはイヤミな感じは一切ないけれど。
あたしはくすっ、と笑って、また彩乃さんを羨望の眼差しで見つめる。
そして、彩乃さんの左手薬指に燦然と輝く、バカでかいダイヤモンドが鎮座するエンゲージリングに目を落とした。ブシュロンのピヴォワンヌだそうだ。