お見合いだけど、恋することからはじめよう
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「あっ、ななみん、こっち〜!」
法務部に所属する白石 友佳が奥のテーブルから手を振る。
「ごめん、待たせたー、ともちん」
あたしは小走り気味に駆け寄り、テーブルの下の籐籠の友佳のバッグの隣に、フルラのピンクベージュのパイパーを入れ、ハイスツールに腰を下ろす。
今日は月イチの「NO残業day」の日。
そして、ひさびさの「同期会」の日である。
場所は、南青山にある会社近くのスペインバルだ。
同期、と言っても「TOMITAホールディングス」の方は「TOMITA自動車」と違って新卒採用枠が少ない。本社ではたったの数人だ。
そのうえ、この歳になると転勤で東京から離れる人もいるし、結婚している人はせっかくの早く帰れる日なので「家族サービス」しなきゃなんないし、カレカノのいる人は言わずもがな、である。
「あと……だれが来るの?」
あたしはジャニーズ系のカッコかわいい金髪の店員さんからおしぼりを受け取りながら、友佳に尋ねる。
「それがねぇ……あとは青山くらいなんだよー」
……ふうん、情シスの青山 智史かぁ。めずらしいな。
情報システム部の業務は本社に集約されてるから、彼には転勤はない。その代わり、と言っちゃなんだが、めちゃくちゃ忙しい。
NO残業dayだけど、ヤツに限っていうと、いつ来られるかわからない。
「……そんじゃさ、ともちん、もう飲み物頼んじゃおうよ」
あたしたちは早速、生ビールをオーダーした。