お見合いだけど、恋することからはじめよう

「小川からは『一回だけでいいから抱いてくれ』って言われた」

青山はまたもや悪びれることなく、さらりと言った。

「はぁ?一回だけで済むわけないじゃん。
『あたし、ハイスペックな人をゲットするためだけにあらゆる伝手(つて)を頼ってこの会社に入ったんですっ!そういう人とおつき合いできたら、寿退社目指して一気に土俵際までがぶり寄りますからっ!』と言って(はばか)らない子だって、うちの女子社員ならだれでも知ってるよ?」


実は、青山は究極の青田買い入社だった。

一応、学部卒での入社なので同い歳の同期ではあるが、彼はT工大を卒業後、大学院へは給料をもらいながら会社のお金で進み、修士課程を修了後に本格的に入社していた。(在学中からすでに「即戦力」としてバリバリ仕事はしてたけどね。)

ほんと、オンナ関係に気をつけないと、せっかくの「幹部候補生」から脱落しちゃうよ?


「青山、気をつけなよ?
小川ちゃんてさ、学生時代にキャバクラでバイトしてて、そこの常連さんだったうちの重役のだれかのコネで入社した、ってウワサだよ」

あたしは秘書室に配属されているから、その人がだれで小川ちゃんとはどんな関係だったかなんて、百も承知だけど。
だいたい、彼女のあの歳で『一気に土俵際までがぶり寄りますからっ!』はシブすぎるっしょ?

「あ、そういえば……一人、相撲好きの重役がいたな」


……同じことを考えていたか。

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