お見合いだけど、恋することからはじめよう
「……にしても、オンナってのは、そんなに結婚したいのか?」
青山は呆れ果てた声でつぶやく。
「みんな、早く幸せになりたいのよ」
あたしだって、親の言うとおりにお見合いしたし、今テーブルに突っ伏して寝ている友佳だって、先日お正月休みで帰省したときに「結婚する相手はいないのか?」って、実家でさんざん訊かれたはずだ。だからこその今日の呑みっぷりに違いない。
「ふん……結婚したからといって、幸せになるとは限らないだろう」
血も凍りそうな氷点下の声だった。
そのとき、モヒートがやってきた。やっぱり、同じ女の子の店員だ。あたしが来たときにおしぼりを持ってきてくれた、あのジャニーズ系のカッコかわいい金髪くんはどこ行った?
「ねぇ……青山んちって離婚してるの?」
男でまだ二十七歳っていうこともあるけれども、ヤツにはまったく「結婚願望」とやらが欠落してるようなので、もしかしたら、と思って訊いてみた。
「いや、してない」
……あら、違ったか。
「でも、おれが小学生の頃、親父が女と出て行ったから、それ以来、親父の顔は見ていない」
青山は相変わらず、さらりと言う。
「ごっ、ごめん……立ち入ったことを訊いちゃったね」
今さらながら、焦って詫びる。
ちょっと、酔っているのかもしれない。
ここは果実系リキュールと合わせたいろんなモヒートがあるから、ついあれこれ呑み過ぎてしまった。次は、生フルーツが摂れてデザート代わりにもなるサングリアにしよう。
「いや、別に」
やってきたプレーンなモヒートを呑みながら、青山はこともなげに言う。