一円玉の恋
一円玉の意地
とりあえず、仮眠に近い形で夜明けと共に起き、自由に使っていいと言われた食材を滅多滅多ギリに余す事なく使って、朝ごはんの味噌汁と、野菜の炒め物を作った。
食べるかどうか分からないけど、とりあえず山神崇の分も用意した。
毒を入れたい思いを必死に堪えて、ラップしてメモを添えて。

そして、身支度を整えて早々にマンションを出た。
アパートに寄って、煤だらけの部屋を見るとやっぱり悲しくなる。
込み上げてくる熱いものを押さえて。
大学に向かった。

今日は午前の講義だけだったから、そのまま、部屋を探しに不動産屋に向かった。
あちこち回るが、値段が高い所か安くても、学校からもバイト先からもかなり遠くなる物件ばかりで、困った。
時期的にも中途半端だから、なかなか良いのがない。
友達も殆どが自宅通いだから、転がり込むわけにもいかず、やっぱり親に言うべきかと悩みながら、バイトに行った。

お世話になりました。って、メモに書いてやったのに、どの面下げてアイツの所に帰ろうかと、店内の商品補充をしながら考えていると、背後から、「ねぇ、部屋見つかったの?」と声をかけられた。
振り向くと、にやけた顔で山神崇が立っていた。
いつの間に居たんだ。「ううっ」何も言えない。
「だよね。はっは。大見得切って出て行ったのにね。かわいそ。」と、自分の予想通りだったのが面白いのか嬉しそうに笑う。

くそぅ。くそぅ。くそぅ。
私の私の大バカ野郎、もっともっと色々不動産屋回れば良かったと、今度は自分の甘さを責める。
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