一円玉の恋
「どうせそんな事だろうと思って、もう荷物は運ばせてあるからね。あと、店長に挨拶しといた方がいいかと思って来たんだけど。」

と店長は?と探し出す。
ええっ‼︎待って、なんで挨拶いるの。
要らない。絶対、要らない。

「ちょっちょっと待ってください。挨拶はいいです。すぐに出て行きますから。挨拶はしなくていいです。アパートの事は伝えてますし、今は知人宅にいる事も言ってあるので大丈夫です。」

と必死で止めた。

「あっそ。わかった。じゃあ、直ぐに出て行ってね。」

と、今度はどこか面白くなさそうにして、店を出て行った。
なんなんだ。山神崇。暇か?

バイトが終わって、帰りたくないなぁーと思いながらトボトボと足を進める。
あーあー。この状況を乗り切るにはバイト増やすしかないか…。
うーん…卒論もあるし、就活もあるし。
余裕がない…でも、増やすか、もっと好条件の所探すしかないか…。
あれ、そういえば、スーツってどうなってるんだっけ。
もしかして煤けてる?と就活必需品の存在を思い出して、急いで帰った。

ガチャっとドアを開けて、「ただいま帰りました。」と、居るか居ないか、分からない人に挨拶をして急いで部屋に入ると、家具や荷物の煤は綺麗に掃除されて運ばれて来ていた。
スーツは?と急いで探すと見当たらない。
えっなんで。どこ行った?と、思いつく所をどんどん開けるが、見当たらない。
しかも見当たらないのはそれだけじゃない。
下着や靴下まで見当たらない。
なんで?燃えた?いや、それはない。
でも、ない。見当たらない。
バタバタ荒らし回っていると、

「おかえり。なにしてんの?結構うるさいよ。」

と山神崇が部屋に来た。
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