一円玉の恋
「服がないんです。あと、下着とかも。どうしたのかなって思って。」

と、引き出しを開けながら言い訳をすると、

「ああ、それなら、今洗濯してる。下着はもう乾いてるかな。スーツはクリーニングに出したよ。」

と予期せぬ言葉が返ってきた。
スーツをクリーニングに出してくれたのは感謝したいが、でも下着は…「ええ!なんで?」

「なんでって、煤けた匂いが臭いからに決まってるじゃん。片っ端から洗ってやった。だって俺の家が臭くなるのは我慢出来ないからね。」

と、山神崇は当たり前だと言わんばかりに言ってくる。私は、「いやーーー。下着見られたぁーー。」と突っ伏して叫んだ。そこに容赦なく、

「うるさい!アンタのガキ臭い下着なんか見ても何も反応しないね。もっと色気のあるヤツにしたら。まぁ、中身が伴ってないからどっちにしても反応はしないけどね!」

と、二十歳超えた年頃の娘に言っちゃいけない言葉を宣ってくる。
くそぅ。くそぅ。くそぅ。出っててやる。
すぐに。すぐに出てやるさ。きっときっと。

その後、あとは自分でやりますと、洗濯機を占拠して残りを片っ端から洗って行った。
一通り終わって、遅い夕食を用意し、スマホを片手に黙々と食べていると、山神崇がやって来て、お腹空いたから俺も食うと、向かいに座って来た。
山神崇の分も用意して、座り直しスマホ片手に食事をする。
< 15 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop