一円玉の恋

「ねぇ。食事中にスマホなんて、行儀が悪いよね。ちゃんと前向いて食べなよ。」

と、少し怒って言ってきた。

「行儀が悪いのは分かってますけど、バイト増やそうと思って、今探して応募出来るところは応募していってるんです。貧乏人はせかせか働かないとお金が貯まらないので、邪魔しないで下さい。
ここの間借り賃だって、食費だって払わないといけないし。新しい所も早く探さないといけないし。色々お金がいるんです。なので、行儀悪くてすいませんが、無視しといて下さい。」

と、スマホから目線を離さずに言った。

「おい、食事中だよ。やめなよ。ここは俺の家だよ。居る間は俺に従ってもらうから！」

と、山神崇がマジ切れしている。
あっ流石にこれはやばいかもと、渋々従ってスマホを置いた。
なんなんだ、バイト先での事といい、この男の怒る沸点が分からない。
だったら早く、食べてしまえとガツガツ食べた。

「あのさ…バイト増やすんだったら、ここで働けば良いじゃん。」

と、山神崇が唐突に思っても見ない事を言ってきた。
「えっ。ここで働くとは？」と、訳が分からず聞くと、

「そうだね。簡単に言えば、家事全般と俺の仕事の手伝いね。それに見合った給料を払うよ。ここの間借り賃と食費代は払わなくていいよ。
まあ、メインは学業と就活とコンビニのバイトで回してくれて構わないけど、三食は毎日作ってもらう事と、休みの日には俺の部屋以外の掃除とか、手伝いとかしてくれたらいいからさ。所謂、住み込み家政婦さんかな。どう、悪い話じゃないよね？」

と、いい案でしょ？と、言わんばかりの笑顔で提案してくれる。