一円玉の恋
確かに悪くない。それが本当ならとっても有難い話だ。
山神崇から後光すら見える。
思わず拝みたくなる気分にもなる。
だが、そこは山神崇が言うことだ、信じて馬鹿を見るのは目に見えている。
信じない。信じない。信じない。なので、

「確かにいいお話ですけど。お断りします。これ以上お世話になる訳にはいけないので、地道に探します。」

と、丁重に断る。
山神崇がまた不機嫌になって、

「ふーん。じゃあ、飽きたから明日出てって、って言ったらすぐに出れるの?」

と脅しのような事を言ってくる。

「えっ。明日?」

「そう、明日。荷物も全て出して。って言ったら出て行けれるの?」

「できません…。」

「だよね。じゃあ。これは提案じゃなくて。命令。ここで働け。」

「じゃあ、ご馳走さま。俺好き嫌いはないし、下着洗われてても全然平気だから。よろしく〜。」

と言って、また有無を言わさず押し切って去って行った。

なんなんだ。あの男は。
何を考えているのかさっぱり分からん。
こっちは、いい話には騙されまいと、話しに乗らないようにしているのに。
断わったら、今度は命令だと言って、有無を言わせず押し付けてくるし、ほんっと意味が分からない。
お金持ちだからって横暴よ。
でも、とりあえず、良しとしよう。
有難い事は有難いのだ。
明日から大いに腕を振るってやる。
負けるもんか。あの暴君オヤジ!

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