一円玉の恋
「あのさ、普通お世話になってる人には謙虚になるよね。だったら、お伺いくらいは立てるよね。笑顔で一緒に食べませんかって声かけて来るものだと普通は思うけどね。声かけて反応なかったら、ほっといてくれていいけどさ。
だいたい朝はちゃんと起きてるよ。昼飯はラップして冷蔵庫に入れといてくれて構わないけど、朝と夜はなるべく一緒に食べてもいいんじゃないのかな。君に嫌われてるのは知ってるけど、俺が翠ちゃんを世話してあげてんのは事実だよね。」

うっ痛い所を付いて来なさる。仰る通りです。お世話になってます。そりゃ、ものすご〜くなってます。有り難いです。
でも嫌いなのも事実です。
朝から顔見たくないなぁーって思うのも事実です。
貴方の下着は割り箸で摘まんで洗濯機に入れてます。
でも、大変お世話になってます。
なので悔しいですが、ここは素直に、

「わかりました。すいません、これからはちゃんと声かけますね。じゃ、私、学校なんで行きます。」

と、笑顔で伝えた。

「ああ、行ってらっしゃい。」

なんだ…嫌ってるってちゃんと分かってるんだ。
なのに何故、自分を嫌ってる人間を好条件で住まわせてくれるんだろう?
大人って意味わからん。
大人ってあんなのなのか?
山神崇だからなのか?
本当、早めにアパートを見つけて出て行こう。
あんな気まぐれには付き合ってられない。
打倒格差社会だ。
ちゃんと就職しなければ。
ちゃんと勉強しなければ。
頑張れ翠。負けるな翠。
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