一円玉の恋
目が覚めたのは夜中。
ガタンっと大きな物音と、「ちょっと〜しっかりしてよ〜」と、色っぽい声を上げる女性の声を耳にした時だった。
「何?」と、びっくりして、恐る恐るドアを開けて廊下に出ると、ちょうど山神崇と髪の長い女性が、もつれ合うように玄関でキスをしていた。

失敗したと思いつつ、そっ〜と踵を返して部屋に戻ろうとしたが、気配に気づいた女性が、「ちょっと〜何逃げてんのよ。コイツ一緒に運ぶの手伝ってよ。」と、声をかけて来た。
心で、やだ!やだ!やだ!と拒否を叫んだが、届くはずもなく、嫌々、山神崇の側に行き、自分の肩に片方の腕を乗せ女性と共にリビングのソファまで運んだ。

「あら、可愛いお嬢さんね。珍しく女の子を預かってるって聞いたけど、こんな可愛い子だったのね。でも、早く出て行った方がいいわよ。コイツ歳の割に見た目とお金持ってるから、かなりモテるし、手も早いのよ。コイツの毒牙に何人の女が泣かされたか。」

と、見惚れるほどの綺麗な女性さんが勿体ない事に私に忠告してくれた。
だがその忠告は、全く私には無関係な事だったので、

「あっ、その点は大丈夫です。御心配には及びません。仰る通り、家が見つかり次第早々に出ていくつもりです。あと、お世話になってますが、この方には全く興味も関心も持ち合わせてないので、私に構わずどうぞお続け下さい。気になるようでしたら、耳栓しときますね。」

と、部屋に戻ろうとした。
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