一円玉の恋
うーん。うるさいなぁ。人が気持ちよく寝てるのに〜。
それに、山神さんの好きな人は杏子さんって言ってるじゃない。私じゃない。
私は山神さんは好きじゃない。お金大切にしないし、人を馬鹿にするし、時々酷い事をしてくるし。
好きじゃない!

フワフワふわっと、身体が揺れている。
誰かの大きな背中におぶられている。
あったかくて心地いい。
いつまでも、揺られていたいなぁ〜。

あれ、誰かが優しく頭を撫でてくれる。
もっとして欲しい、もっと撫でて撫でてと夢の中で催促をする。
「ごめんよ。酷い事をして、ごめん。好きだよ。愛してる。」と囁いてくる。
その人はいつまでもいつまでも抱きしめて撫でてくれる。なんか安心する。
あ〜いい匂い。優しくて落ち着く。
なんか離れたくないなあ。

ハッと我に返ると、男の人の胸が至近距離にあった。
私の体はすっぽりと男の人の腕に収まっている。
誰!と見上げると山神崇だ。
規則正しい寝息を立てている。
うそっなんで!
あっ!やばっ!私カウンターで寝てた。
えっ!でも。いやーーぁ。と跳び起き自室に逃げた。

自分の布団に潜り込んで、悶々とする。
山神崇の温もりと匂いが体から離れていかない。全身がバクバクする。頭から湯気が出そうだ。
昨日の恐怖体験はすっかり頭から木っ端微塵に消え去っていた。
なんなんだあの男は、次から次へと私の経験値からは想像もつかない事を平気でしてくる。
心が追いつかないから勘弁してほしい。
部屋早く見つけて欲しいなぁ。
私はここを早く出たい。
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