一円玉の恋
一円玉の嵐
かなりハードな京都旅行を終えて、ヘトヘトに疲れてマンションに戻ってきた。

それでも、夜中見た良い夢のおかげで、私の心は大分穏やかになった。
あのいい匂いをさせて、抱きしめていてくれた人は誰なんだろう。
現実にいたら、ぜひ会いたい。
一人近い人を知っているが、まさかね。
バリケードだってちゃんと作ったし、朝起きた時には、まだその人は自分の布団でぐっすり寝ていた。
だから、それはナイナイナーイ絶対ナイと頭を振った。

「なにやってんの?」と怪訝な顔をして山神さんが言ってきた。

「べつに。なにも。」

「ふーん。暑さに頭をやられたかと思って心配したよ。ご飯、杏子の所で食べようか?」

キッラーン。やったーー。とブンブンブンと頭を縦に振る。行く行く絶対行くー。

「はいはい。わかった。わかった。落ち着け。本当杏子の事好きだよね。」

また、ブンブンブンと頭を縦に振る。もちろん大好き!大好き!大好きー!

「俺は?」

ピタッと止まって、小首を傾げる。

「あっそ。」

「嫌いではないんだな。」

また、小首を傾げる。

チッと舌打ちして「寝てる時は素直なのにね。」と呟いている。

誰が?何を?

「はい!出発!翠ちゃん、杏子に渡すお土産忘れないようにね。」

また、ブンブンブンブンと頭を縦に振った。

「なんかどっかのおもちゃみたいだね、でも、いい加減声だそうね。」

と山神さんが優しく笑った。好きだなその顔。
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