一円玉の恋
翠ちゃんを手に入れたくて必死なのよ。ちゃんと遊びの女だって、翠ちゃんに出会ってからは片っ端から切りまくったからね。
今は綺麗なもんだし、これからも大丈夫。
だからね、翠ちゃん。何も心配せずに翠ちゃんの生き方、模索して歩んで大丈夫だからね。
そして、コイツを支えてあげて。この捻じ曲がった根性を治してあげてね。
あっでもね。あんまり待たせると、おじいちゃんになるから、ほどほどで。」

と優しく語りかけてくれる。

うーん。やっぱり、杏子さんは素敵だ!杏子さんみたいになりたい!
体型は無理だけど…。せめて心意気ぐらいは…。

「じゃあ、これでお開き!。さっ、アンタは帰りな。」

と、問答無用で山神さんを追い出した。
彼は泣く泣く帰って行った。

杏子さんは、お店の準備に戻っていき、私は自分の荷物を片付ける。

まだ、きつく抱きしめていた山神さんの残り香が体にまとわりついている…。
散々弄ばれた唇には余韻がはっきり残っている。
なんだか、口寂しくなって、己をかき抱く。
恐るべし山神崇。
自分の中にある女が目覚め出す。
誰かを焦がれる自分に驚きつつ、自分が何者なのか一つ知る。
しっかりしよう、ちゃんと山神さんの側に居られるように、頼もしい存在になれるように、与えてくれる愛情に見合うように、成長しないとと考える。
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