一円玉の恋
私の両親は、連れて来たのがそれなりにイケメンで有名人だった為、お母さんはウキウキ、お父さんは少し緊張気味に挨拶を受けていた。
私のすぐ下の弟は、私と同じく県外の大学に通っているため不在だった。
山神さんは、私の親を目の前にしても全く動じず、

「翠さんとは、まだお付き合いを始めて半年ほどしか経っておりませんが、ゆくゆくは結婚をと考えて、お付き合いを進めさせて頂こうと思っております。
ですから、それをご了承願いたいと思いご挨拶に伺いました。」

と、多くの人が言う決まり文句を並べて挨拶をした。
私は結婚の言葉には驚いて、「私まだ、そんなの聞いてない!」と親の前で言ったが、「結婚はまだ先だけどね。婚約はしとこうと思ってね。」と山神さんのポケットから結構高そうなリングが小さなリボンを付けて出て来た。

その行動に母が「いやーーあ。素敵!」と拍手して、「こんな融通の利かない娘、熨斗つけてお渡ししますよ。どうぞ今からでも持って行って下さっても結構ですよ。」と宣ってくる。
おい!母さんそれはあんまりじゃないか…。
自分で言うのもなんだけど、可愛い良い娘だと思いますよ。
父は「男は仕事ができる人がいいからね。山神さんは翠には勿体無いくらいの人じゃないか。」と山神さんに向き直って、「山神さん娘をよろしくお願いします。」と、どこか寂しそうに頭を下げた。
そうそうその態度よね。お父さん。
お母さんも少しは見習ってよね。
本当のお父さん、私はお父さんが大好きです。うっ、なんか泣けてきます。
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