カラダから、はじまる。
わたしはとたんに全身の血が、かああぁっと顔に集まってくるのを感じた。
「水野局長の……お嬢さん……ですか?」
どんな無理難題であっても表情一つ変えることなく淡々と処理することから(だから、うちの父からこき使われることになるのだが)、田中は庁内で「人造人間」と呼ばれていた。
しかし、そんな彼でも、この急な展開にはさすがにとまどいの色が隠せないようだ。
「いやぁ……うちの家内が言うにはだな。
娘も……もうそろそろいい歳なのに、自力で見つけられる気配もなさそうだから……『会社』で見合いしてくれそうな男はだれかいないのか、と言ってだな……」
……ええっ、おかあさんったら、そんなことをおとうさんに言ってたのっ?
二十代のときはとにかく仕事、仕事で脇目も振らずやってきた。両親からは「結婚は?」と一度も訊かれたことはない。
だから、本当にびっくりした。
……でも、やっぱり、考えてくれてたんだなぁ。