カラダから、はじまる。

「……だから、ほんっとなんですってばー!」

大きな声とともに、課のドアが大きく開いた。
わたしと高木はそちらへ目を向ける。

「戸川、ほんっとに諒志のレアな姿が見られるんだろうな?」

そこにいたのは、本宮と戸川だった。

「ねぇっ、田中さんはまだ大笑いしてるっ⁉︎」

戸川が高木に尋ねた。彼らは出身大学も同じ同期だった。

高木は窓の方を指差した。田中のいる島の方だ。


彼はそこで全身を震わせ、今や息も絶え絶えになって、ヒィヒィ笑っていた。

なんだか、このまま笑い死にしてしまうんじゃないか、と思うほどの狂乱ぶりである。

課内のだれ一人として……たとえ課長ですら、彼には一歩も近づけなかった。マネキンチャレンジをひたすら「継続中」だ。


「……ま、マジかよ……あれ、ほんっとにあの『田中』か⁉︎」

本宮は(かす)れた声でそうつぶやいたあと、絶句した。彼も田中とは知り合って十数年になるが、こんな姿を見たのは初めてのようだった。

戸川は「ほらねっ」とばかりに、満足げなドヤ顔をしていた。

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