カラダから、はじまる。

「えっ……し、仕事はどうするんですか?」

高木が息をのんだ。いつも冷静な顔を痙攣(ひきつ)らせている。田中だって、この土日は庁舎(会社)から出られないほどの案件を抱えているはずだ。

「こんな時間に、ななみんをたった一人で渋谷になんか置いておけないだろう?」

なのに、田中はスマホの向こうに向かって、もどかしげに言い放っていた。

「いいか、コンビニに入ったら、もう一度通話して店舗の名前を教えてくれ。
とりあえず、これから道玄坂方面へ向かうから」

そう言いながらデスクの上を手早く片付けだして、すぐにでも外に出られるよう支度を始めている。

……ううっ、姉のわたしとしては、申し訳なさすぎて、隣にいる高木の顔をまともに見られないんですけれども。

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