カラダから、はじまる。
……田中と「お見合い」かぁ。
なんだか、今さらの感がなくもないけれど。
でも、大学のときも就職してからも、まったく「男女の仲」に進展する兆しすらなかったのは……
もしかしたら、わたしと田中はこんなふうに周囲に動いてもらって結ばれる、という道程だったのかもしれない。
……それにしても、改めて「お見合い」っていうのは、どこかこっ恥ずかしいなぁ。
「お見合い」というからには、例えばちゃんとした料亭とかホテルとかで行うのかしら?
……あっ、ということは、田中の「お父さん」や「お母さん」にもお会いするんだよね?
田中の父親は、あさひ証券の常務取締役だった。あさひ証券は全国に二百数十社あると言われる証券会社の中で十本の指に入る準大手である。
もちろん、東証一部上場している大企業だ。
そして、母親は専業主婦で……そして、妹が一人いた。その妹はT女子大学を卒業後、お父さんが勤めるあさひ証券に入社したと聞いている。
彼の「背景」をあれこれ思い出していたら……なんだか、今から緊張してきた。
「あの……水野局長」
田中の声が聞こえてきて、ぼんやりとしていたわたしの意識が覚醒した。
「局長の『お嬢さん』……というと……?」