カラダから、はじまる。
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
今日が、彼らの結婚式の日だ。
我が国を代表する一流の老舗ホテルの教会での結婚式が終わり、これからバンケットルームへ移動して披露宴である。
新郎新婦とわたしたち親族はその合間に、記念の写真撮影となっている。
その場所へと赴きながら、わたしは先刻までのチャペルでの挙式を思い起こしていた。
もともと、多忙な仕事ゆえに七海と顔を合わす機会は激減していたから、彼女がほとんど家にいなくても、わたしにとっては違和感はなかった。
それとも、もしかしたら精神の負担をできるだけ軽くするために、脳内麻薬でも分泌されているのであろうか?
すでに彼らは婚姻届を出して新しい戸籍に入った正真正銘の「夫婦」だというにもかかわらず、わたしにはまるで実感がなく、頭の中はまるで霞がかかったような感じで毎日を過ごしていた。
だが、田中の手によって、結婚指輪であるティファニーのクラシック ミルグレインが、七海の左手薬指にすーっとはめられていったそのとき、突然、脳内が鮮明になり、わたしは「覚醒」した。
とたんに……
ぎりりっ、と胸に鋭い痛みが走る。
知らず識らずのうちに盛り上がっていた涙が耐えきれず、つぅーっと頬を伝っていくのがわかった。
わたしは黒の 2.55から、真っ白なハンカチを取り出してそっと拭った。
……あぁ、ほんとうに、
田中は七海と結婚してしまったんだ。
今日が、彼らの結婚式の日だ。
我が国を代表する一流の老舗ホテルの教会での結婚式が終わり、これからバンケットルームへ移動して披露宴である。
新郎新婦とわたしたち親族はその合間に、記念の写真撮影となっている。
その場所へと赴きながら、わたしは先刻までのチャペルでの挙式を思い起こしていた。
もともと、多忙な仕事ゆえに七海と顔を合わす機会は激減していたから、彼女がほとんど家にいなくても、わたしにとっては違和感はなかった。
それとも、もしかしたら精神の負担をできるだけ軽くするために、脳内麻薬でも分泌されているのであろうか?
すでに彼らは婚姻届を出して新しい戸籍に入った正真正銘の「夫婦」だというにもかかわらず、わたしにはまるで実感がなく、頭の中はまるで霞がかかったような感じで毎日を過ごしていた。
だが、田中の手によって、結婚指輪であるティファニーのクラシック ミルグレインが、七海の左手薬指にすーっとはめられていったそのとき、突然、脳内が鮮明になり、わたしは「覚醒」した。
とたんに……
ぎりりっ、と胸に鋭い痛みが走る。
知らず識らずのうちに盛り上がっていた涙が耐えきれず、つぅーっと頬を伝っていくのがわかった。
わたしは黒の 2.55から、真っ白なハンカチを取り出してそっと拭った。
……あぁ、ほんとうに、
田中は七海と結婚してしまったんだ。