カラダから、はじまる。

「……ちょっと、七瀬。
ここでは、あんまり呑まないでよ?」

親族の写真撮影が終わり、披露宴会場(バンケットルーム)の一番下座のテーブルに着いたわたしに、母がこそっと耳打ちする。

「諒志さん側からは、あなたの職場の方々も大勢お越しいただいてるんだから」

田中の父親は(株)あさひ証券の常務取締役なので、本来ならばお仲人や主賓はそちらの方から、となるのが筋だと思うのだが、
『結婚するのは諒志(息子)なので、私のことは一切考慮することなく、息子の立場で最善だと思う方にお願いできれば』と、おっしゃったそうだ。

だから、結果的に金融庁(うち)の関係者ばかりになってしまった。

「……わかってるわよ」

わたしは母をじろりと見て答えた。

……わたしがおとうさんに似て「(ザル)」だということは、みんな『わかってるわよ』という意味だけどね。

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