カラダから、はじまる。
「七瀬さん、喉、渇きませんか?
なにかお酒、持ってきましょうか?」
高木は室内の方へ視線を向けて尋ねた。
「あ、えーっと、そうねぇ……」
……もう帰るからなぁ、どうしよう?
「ウワサ以上のつよさですよね?
亜湖さんと同じものを呑んで、潰れない人はなかなかいないそうですよ」
高木は、さもおかしそうにフフッと笑った。
……『亜湖さん』って、田中の妹?
「披露宴のとき、隣のテーブルにいた彼女と同じリキュールを呑んでいたでしょう?」
……リキュール?
「えっ、あれは……果汁百パーセントのソフトドリンクよ?」
すっごく濃厚で美味しかったから、さすが我が国を代表する一流ホテルね、と感心はしたが。
しかし、高木は首を左右に振った。
「あれは、ソフトドリンクじゃないですよ。
亜湖さんがお気に入りの奈良の地酒をつかったリキュールなんです。
この前、結婚式に参列した際には、隣の席の人が彼女の風貌からソフトドリンクと誤解して同じものを頼んで、酔い潰れてしまったらしいですよ」
……えええぇーーーっ⁉︎
だけど、そういえば……
田中が呑み会で、女子校育ちの妹がコンパで呑み過ぎて「悪い虫」にお持ち帰りされないように、二十歳になるとすぐに父親と一緒に「鍛え上げた」とかって、空恐ろしいことをさらりと言ってたっ!