カラダから、はじまる。

わたしは生まれて初めて「立ってるのがやっと」という状態に(おちい)った。

あわてて、背後の壁に背中を預ける。
それでもしっかり踏ん張ってないと、足元からずるずるずる…と崩れ落ちて、リノリウムの硬くて冷たい床にへたり込みそうだ。

突然、耳がぼわんと膜が張ったようになり、たった独り「外界」から遠く離れたところに置き去りにされたみたいになる。

そのくせ、どっ、どっ、どっ…と心臓を叩く鼓動なのか、それとも全身を駆け巡る血流なのか、この身の「内界」から聞こえてくる音が(かしま)しい。


……なんで……なんで、七海なの?

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