カラダから、はじまる。

急に、わたしの気分が悪くなったあのあと、

『七瀬さんが心配なので、僕が送りますよ』

あたりまえのように、そう申し出る高木に、

『山岸や戸川に、先に帰るって言わなくてもいいの? 今まで一緒にいたんじゃないの?』

わたしが気を遣って尋ねると、

『あとでLINEしておきますから、大丈夫ですよ』

彼はこともなげに言った。

わたしも、本宮にはあとでLINEをしよう、と思った。


そうして、わたしたちはひっそりと結婚式の二次会を辞した。

高木が『いきなりタクシーに乗るよりも、夜風にあたった方がいい』と言うので、松濤から南に向かってしばらく歩くことになった。

ところが、井の頭線・神泉駅の辺りで、却ってわたしの「酔い」が回ってきたのか、情けないほどふらふらとした足取りになってしまった。

すぐに高木が駆け寄って支えてくれたが、ルブタンの十センチヒールのために、今のわたしの身長は彼とほぼ同じなのだ。
しかも、彼は華奢な身体(からだ)つきだった。

それでも、彼に支えられてゆっくりと歩く。
こんなときに限って、時折タクシーが流れてきて停めようとしても空車ではなかった。

『すみません、どうやら僕の方も「酔い」が回ってきたみたいです。
……休憩してもいいですか?』

突然、高木がわたしをじっと見て、訊いてきた。


わたしたちは……円山町(ホテル街)(はず)れにいた。

< 150 / 167 >

この作品をシェア

pagetop