カラダから、はじまる。
急に、わたしの気分が悪くなったあのあと、
『七瀬さんが心配なので、僕が送りますよ』
あたりまえのように、そう申し出る高木に、
『山岸や戸川に、先に帰るって言わなくてもいいの? 今まで一緒にいたんじゃないの?』
わたしが気を遣って尋ねると、
『あとでLINEしておきますから、大丈夫ですよ』
彼はこともなげに言った。
わたしも、本宮にはあとでLINEをしよう、と思った。
そうして、わたしたちはひっそりと結婚式の二次会を辞した。
高木が『いきなりタクシーに乗るよりも、夜風にあたった方がいい』と言うので、松濤から南に向かってしばらく歩くことになった。
ところが、井の頭線・神泉駅の辺りで、却ってわたしの「酔い」が回ってきたのか、情けないほどふらふらとした足取りになってしまった。
すぐに高木が駆け寄って支えてくれたが、ルブタンの十センチヒールのために、今のわたしの身長は彼とほぼ同じなのだ。
しかも、彼は華奢な身体つきだった。
それでも、彼に支えられてゆっくりと歩く。
こんなときに限って、時折タクシーが流れてきて停めようとしても空車ではなかった。
『すみません、どうやら僕の方も「酔い」が回ってきたみたいです。
……休憩してもいいですか?』
突然、高木がわたしをじっと見て、訊いてきた。
わたしたちは……円山町の外れにいた。