カラダから、はじまる。

「ねぇ……高木、日本舞踊をやってたんじゃなかったの? 田中が言ってたわよ?
……なのに、どうして、こんな……」

ともすれば、喘いでしまいそうになる声を必死で抑えながら尋ねる。

「へぇ……諒志さんが、あなたにそんなことを」

なぜか高木の美しい顔が、また歪んだ。

「知りませんか?……日舞ってのは、足腰が強くないと、きちんとした踊りができないって」

そう言いつつ、彼はぐっと入れた腰をぐりぐりっ、と回した。

「……ああああぁ……っ⁉︎」

とたんにわたしの背中が、海老のように反り返る。

「な…に……そんなに……本格的に……習ってたの……?」

一瞬にして、生理的な涙が溢れてきて、息も絶え絶えになってしまう。

「日舞は『教養』の一つでね。
だけど、筋力は剣道でついたのかもしれないな。 一応、有段者なので。ほかに茶道や香道など『和』に関わる『作法』は、物心ついたときから徹底的に仕込まれました。
……でも、本格的に取り組んだのは、華道だけどね」

……『華道』?

すると、高木は不敵に、にやりと笑った。


「これでも……『次期家元』として、育てられたので」

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