カラダから、はじまる。
……ええっ、放棄しちゃったの?
それって、ものすごーく大事になったんじゃないの?
あれっ、そういえば……
これとよく似た話を、この前どこかで聞いたような気が……
「あーっ、思い出したっ!
本宮のお見合い相手のおうちだ‼︎」
わたしは素っ頓狂な声をあげたと同時に、また「彼」を締め上げてしまった。
「……ぅく……っ⁉︎」
高木はまた、奥歯をぎりりっ、と噛み締めて堪えることとなった。
「せっかく……持ち直した……矢先…だった…のに…っ……!」
その麗しい顔の眉間には、般若のような深い縦ジワがくっきりと走っていた。
「あっ、ごめん、ごめん。
……ね、一回、出しておく?」
わたしは親切心で「提案」してみた。
「……どうして……七瀬さんが……知ってるんだ?」
「提案」はキレイにスルーされた。どうやら、自力で堪えるようだ。
「本宮から聞いたのよ。彼のお見合い相手の華道の家元の娘って、次期家元として期待されていた『御曹司』が出て行っちゃったから、急に跡を継ぐ羽目になっちゃったそうなんですって。
……もしかして、その『御曹司』って、高木?」
「……本宮さんが……あなたに…そんなことを」
なぜか、高木の般若の顔がさらに険しくなった。