カラダから、はじまる。

「さぁ、また……先刻(さっき)みたいに、気持ちよくなってもらいましょうか?」

ゆっくりと、高木が腰を前後に動かしだした。
とたんに、わたしの膣内(なか)で落ち着きを取り戻していた「彼」が、ぐんっと「質量」を増す。

「ちょ、ちょっと⁉︎
……やだ……あっ、あ……っん……っ」

抵抗しようとしたが、どこをどう突けばわたしが悦ぶのかを、高木は確実に把握していた。
わたしの「奥」から、じっとりと湧き出てくるのを感じた。すっかり、わたしのカラダは見極められている。

「あなたたちの…同期で……将来…事務次官に…上り詰めるのは……諒志さん…だろうね……あの人と…同期だったのは……不運だったね……きっと……本宮さんも…判ってる……」

彼の腰の動きに合わせて、彼の声も揺れる。
わたしのくちびるからは、もう甘ったるい媚声しか(こぼ)れない。

総合職(キャリア)には、同期が事務次官になれば退官する、という不文律があるのだが、それまでにも見合った役職(ポスト)にありつけない者は「淘汰」されて辞めざるを得なくなる環境なのだ。定年まで在職できるキャリアなんて、ほとんどいない。

「だから……僕の従姉妹(いとこ)の…見合い相手として……彼を…『紹介』したんだ……家元とは……絶縁状態だけど……側近の…者たちとは……まだ…連絡が取れるから……」

たとえ金融庁(役所)を去ることになっても、後ろ盾のない状況から道が(ひら)けるのだ。
本宮にとって、決して悪い話ではない。


……もしかしたら、今、本宮は「お嬢サマ」と逢ってるのかもしれない。

高木の心地よいリズムから(もたら)される甘美な刺激に、わたしは心まで揺さぶられながら、そんな気がしてならなかった。

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