カラダから、はじまる。

「写真を拝見できますか?」

田中が父に尋ねている。

「あ、あぁ……そこに一緒に入ってないか?
家内は入れておいたと言っていたんだがな……」

しかし、がさがさ音が聞こえてきて中を探しているようだが、どうやら入っていなかったようだ。

……おかあさん、しっかりしてそうで、そそっかしいところがあるからなぁ。

「ないか?弱ったなぁ。肝心の写真がないんじゃ……あ、待てよ」

そう言って、父がごそごそする気配がした。

「GWに家族旅行で伊豆の温泉に行ったんだがな……そこで私が撮った写真があったはずだ」

しばらく間が空く。スマホを操作しているのだ。

「あ、これだ、これだ。
……この写真が私の一番のお気に入りでね。
七海らしさがもっとも表れたベストショットなんだよ」

誇らしげに弾む父の声は、紛れもなく「家での声」だった。部下たちから影で「鬼の事務局長」と怖れられている人と同一人物とは、とても思えない。

……げっ、もしかして、おとうさん、
「あの写真」を見せるんじゃないでしょうね?

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