カラダから、はじまる。
「仕方がなかったのよ。各期から二名ずつ選出、って決まってたんだから」
子どもの頃から勉強しかしてこなかった。
就職してからは仕事しかしてこなかった。
これまでの人生で、願ってなにかが叶わなかったことなんて、まずなかった。
もちろん、そのための努力も怠らなかった。
そんなわたしが選から漏れたということは、実は存在証明まで脅かされる一大事だった。
生まれて初めての「挫折」と言っていいと思う。
だから、表にはまーったく出ていなかったらしいが……相当、凹んだ。
でも……彼らに「負ける」ことはわかっていた。
田中も本宮も、人工知能のような情報処理能力を持っているうえに、天才的な閃きも備えているからだ。努力ではどうしようもない、先天的なセンスだ。
そして、それこそがめまぐるしく動く世界情勢の中で、この国の金融行政の舵取りに必要な能力なのだ。
よって、幹部候補生として上層部から求められている……真の能力なのだ。
とはいえ……
すでに研修は終わり田中も本宮も本庁に戻っている今、ようやく「次こそは」と気持ちの切り替えができつつあった、というのに……
……前言撤回だっ。山岸、覚えておけよっ⁉︎
やっぱり、わたしのことなんてだれもわかっちゃいないのだ、ということがよぉーく判った。