カラダから、はじまる。
「……ところで、七瀬さん。
妹さんの会社の同期で、うちの大学の子がいるって言ってませんでしたか?」
確かに……妹の勤務するTOMITAホールディングスでは、法務部がC大閥だって聞いたことあるけど?
……課の呑み会でちらっと言ったこと、よく覚えてるわねぇ。
「今度、妹さんにセッティングしてもらって、合コンとかできませんかねー?ここじゃあ、なかなか思うような『出逢い』がなくて……」
……はあぁっ⁉︎
「残念ね……うちの妹の同期だと、あなたよりも一つ上なのよ」
わたしは遠回しに拒否った。冗談じゃない。
「あっ、いいじゃないっすかー!一つ上の女房は金の草鞋を履いてでも探せ、っていうヤツじゃないですかっ!」
……あぁ、めんどくさいヤツっ!
「合コンはまずいよ、山岸。
だって、七瀬さんの妹さんって、田中さんとお見合いしたんでしょ?行けるわけないじゃん」
うちの課に書類でも届けに来ていたのか、山岸の同期である戸川 美加が口を挟んできた。
本宮の下で働いているノンキャリだ。
ふつう、ほかの課の一般職とはほとんど接点がないのだが、さっぱりしていてイヤミがないから、いつの間にかわたしも話すようになった。
こんなふうにふっと話題に入ってきても気にならない子だから、各課に話し相手がいるらしく、実は情報通だ。
……でも、田中がまだ七海とお見合いしていないことは知らないんだ。