カラダから、はじまる。
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わたしは父のいる事務局長室へと向かっていた。

何の案件なのかは知る(よし)もないが、ここのところの父はすこぶる忙しく、まるで若手職員のように庁舎(会社)に詰めているため、ほとんど家に帰れていない。だから、母から頼まれて着替えなどを持ってきたのだ。

いつものように開け放たれている局長室に入ろうとしたら、人が出てきた。

田中の下で働くノンキャリの高木だった。
主に父の仕事を回される彼に頼まれて、届け物でも持ってきたのであろう。

わたしの顔を見て会釈したので、目礼して返す。

すれ違いざま、白檀だろうか、ウッディー系の(かぐわ)しい香りがふわりとした。

……確か、高木 真澄(ますみ)って言ったかな?

話した記憶はほとんどないが、その名のとおり背筋がまっすぐ伸びて、顔だけでなく所作までもが美しい子だった。

あの田中が、補佐役としてぜひほしいと、父に談判してまで配属してもらったと聞いている。

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