カラダから、はじまる。
「ところで、おとうさん……田中が『オンナの整理が完全に終え』たって、なんでわかるの?
……田中が自分で言ったの?」
あぁ、それはな…と父が遠い目になる。
「田中からは聞いてない。そもそも、おれは『身辺整理しろ』とも言ってない。
おれが七海との見合い話を持ちかけたあと、ヤツはものすごい勢いで『整理』し始めたらしい。
それでおれは、どうやら田中は七海と本気で見合いしたいんだな、と思って見守ることにした。
それでも、なかなか言うことを聞かないオンナがいたらしく、結局は半年も待たされる羽目になったがな」
……どうして、おとうさんがそこまで田中のことを知ってるの?
「田中のことはなんでも高木に聞いている。
現に、つい先刻まで聞いていた。ヤツのことに関しては高木が一番よく知ってるし、頼りになるからな。高木は公私ともに田中の『秘書』だ。
仕事だけでなく、私生活もしっかりと把握している」
……えっ?
「高木って……田中の補佐役の子よね?」
田中は庁内のBBQやボーリング大会などのイベントや同期会なんかには参加するけれども、私生活には絶対に立ち入らせない分厚い「壁」があった。
それでなくとも、人造人間の風貌なのだ。
近寄りたくてもなかなか近寄れない。
世間話をするみたいに、自分の見合い話を戸川にする本宮とは違う。
「そんなに……親しいんだ?」
わたしの声が掠れた。
つい今しがた、入り口ですれ違った凛として美しい面立ちと洗練された優雅な所作が心に浮かんだ。まさに、高木は「秘書」だった。
それって……田中のプラベも把握するくらい、彼から信頼されているってこと?