カラダから、はじまる。
Secret ♯1
去年の夏のことだ。
その日、父のいる事務局長室へ行くと先客があった。
金融庁の外局にあたる証券等取引監視委員会で事務局長を務めるわたしの父親は、超多忙な日々を送っているため、その部屋にだれかが来ているのはめずらしくない。
よって、局長室のドアはよっぽど内密の話をするとかでない限り、いつも開かれている。
わたしは先客の用件が済むまで、ドアの外で待つことにした。急ぎの用ではなかった。仕事の件ではなく、母から頼まれた私用だったからだ。
そもそも、「父娘」のわたしたちが仕事の上で絡むことはほとんどと言ってない。