カラダから、はじまる。
……どうせ、このまま眠れないのなら。
すっかり目が冴えてしまったわたしは、開き直って映画のDVDを見ることにした。
わたしは映画が好きだ。
と言っても、「全米が泣いた」ハリウッドの超大作などにはまったく興味がない。
だから、七海と田中が今日一緒に観たという「ボヘミアン・ラプソディ」にもほとんど食指は動かない。
大通りから一本入った筋にひっそりとあるような昔からある小さなシアターで、いかにも単館でしか掛からないような作品を観たいのだ。
それはフランス映画にありがちなのだが、
「えっ、まさかのここで『Fin』?」
というような観客に置いてきぼりを喰らわすような作品であればあるほど、たまらない。
観終わったあとに「その後」を自分で勝手に、ああでもないこうでもないと考えるのが、至福の喜びなのだ。
だが、昨今の由々しきシネコンブームによって、そんな単館シアターが絶滅危惧種になってしまっている。
にもかかわらず、あまりにも激務のわたしは、なかなか時間を取って観に行くこともままならない。
だから、仕方なくDVDのコレクションが増えていく。(中には観たくてもDVD化されていないのもあるが)
最近はネットの「定額」でいろんな映画が観られるらしいが、ノスタルジーを脅かすものへのせめてもの「抵抗」だ。
わたしはリモコンで部屋の灯りを点け、ベッドから降りてコレクションのDVDがずらりと並ぶシェルフまで行くと、ある一枚を抜き出した。