カラダから、はじまる。

「……七瀬さん、今日はまだ昼メシに行ってないんじゃないですか?」

すでに済ませていた山岸から、声がかかる。

「そういえば……そうだったわね」

区切りのいいところで行こうと思っていたのだが、いつの間にかタイミングを失っていた。

「早く行ってきてください。人間(ひと)って腹が減ると、イライラするもんですからね」

山岸はPCの画面に目を向けたまま、しゃらりと言う。

……な、な、なんですってぇっ?

わたしはぎろり、と睨んだが、書類の山の向こうにいるヤツは目も合わせやがらない。確信犯だ。

「わかったわよっ……じゃあ、ちょっと休憩に入るわね」

わたしはPCのデータをバックアップしてシャットダウンすると、デスクからトリーバーチのポーチを取り出し、立ち上がった。

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