カラダから、はじまる。
「でも、だったらどうして、お嬢サマが『次期家元』になるわけ?
まさか……今の家元が自分の娘に跡を継がせたくなって、先代が仕込んだその『御曹司』を追い出しちゃったとか?」
すると、本宮は軽く首を左右に振った。
「先代の家元が亡くなったあと、引き継いで御曹司を仕込んだのは、今の家元らしいよ。
だが、彼が大学を卒業して『社会勉強』のために就職したら、『外の空気』が良くなっちまったのか、すべての権利を放棄して出て行ってしまったそうだ」
「……そうなんだ。もしかしたら彼は、御曹司でいるのが、ずーっとイヤだったのかもね?
それで、お嬢サマに御鉢が回ってきたわけね」
わたしはそうつぶやくと、温くなってしまったおみそ汁を啜った。
彼女に「やる気」が見られない理由がわかった。
……結局のところ、大人たちの勝手な都合で、人生を理不尽なまでに振り回されるのは「子どもたち」なのよねぇ。
「それで……本宮としては、そういうお嬢サマに情が移っちゃったわけだ」