その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
陽に透けるような栗色の髪は艶を失ってくすみ、てんでばらばらに頭の上で散っている。顎にはうっすらと無精ひげが見える。
空色の瞳だけが、かつてより鋭く彼女を見すえていた。
彼女はつかのま、なぜフレッドがここにいるのかという疑問すら思い浮かばなかった。
「騙してごめん。こうでもしないときみと話ができないから、サイラスに協力してもらった。今日はヴィオラ殿下も公務で留守にしておられるし、今日しかないと思ってね」
われに返ると同時に、カッと頭に熱が昇った。反射的に身をひるがえす。ところがそれよりも早くフレッドが後ろから彼女を抱えこんだ。
「離してください!」
「嫌だ」
「離して! 大声を出します」
「出せばいい」
「何をおっしゃって……!」
彼女は必死にもがくが、フレッドの腕はびくともしない。それどころかますます抱えこむ腕はきつくなった。いつものシトラスよりも強い彼自身の匂いに包まれ、彼女はぐらりとその胸の中へ身体を預けそうになる。
すんでのところで抗う腕に力をこめる。
空色の瞳だけが、かつてより鋭く彼女を見すえていた。
彼女はつかのま、なぜフレッドがここにいるのかという疑問すら思い浮かばなかった。
「騙してごめん。こうでもしないときみと話ができないから、サイラスに協力してもらった。今日はヴィオラ殿下も公務で留守にしておられるし、今日しかないと思ってね」
われに返ると同時に、カッと頭に熱が昇った。反射的に身をひるがえす。ところがそれよりも早くフレッドが後ろから彼女を抱えこんだ。
「離してください!」
「嫌だ」
「離して! 大声を出します」
「出せばいい」
「何をおっしゃって……!」
彼女は必死にもがくが、フレッドの腕はびくともしない。それどころかますます抱えこむ腕はきつくなった。いつものシトラスよりも強い彼自身の匂いに包まれ、彼女はぐらりとその胸の中へ身体を預けそうになる。
すんでのところで抗う腕に力をこめる。