その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
「嫌です! それでまたあなたが傷つくのを、黙って見ていろと言うの? あなたが苦しむのを放っておけと? 私はフレッド様の隣にいると決めました。だからフレッド様にも私の隣で幸せになって欲しいの。苦しい顔なんてさせたくない。それに今あなたは、私に教えてくれると言ったじゃないですか! フレッド様の分からず屋!」
「オリヴィア」

 フレッドが面食らった顔で彼女を見下ろす。

 自分を守ることに精一杯で、彼を思いやれていなかった自分にこそ、オリヴィアは腹を立てていたのだった。
 怯えはまだしつこく残っているけれど、それ以上の強さで彼に応えたかった。

「ずっと待っていてくださったんでしょう?」
「……それは」
「私は、あなただから乗り越えられると思ったの。だから、お願いです。好きなの」

 オリヴィアは決意をこめてフレッドを見上げた。二人の視線がぶつかる。
 彼が眩しそうに目を細め、彼女の濡れた頬を拭った。

「きみは最高だな……やっぱり誰にも渡せない。でも一つだけ約束して。怖くなったらすぐに言うんだ、いいね?」

 フレッドの瞳が切なげに濡れ、オリヴィアの胸が締めつけられる。潤んだ目で、吸い込まれるように彼の目を見つめ返す。

「……このところまともに家に帰れなかったから、こんななりでごめん。いちおう身は清めているんだが」

 彼の不意の弁解にオリヴィアはくすりと笑った。

「また一つフレッド様を知りました」
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