その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
胸の奥があたたかいもので満ちると、重ねた手から力が抜けた。涙の滴が零れ落ちる。
フレッドが指を絡めたまま、なだめるように彼女の額に口づける。額から頬へ、頬から唇へ。
彼女はフレッドの手に抗わず、ベッドに身を沈めた。
「オリヴィア、僕を見て。大丈夫かい?」
覆いかぶさった彼が、オリヴィアをじっと見下ろす。不思議ともう恐怖も嫌悪も覚えなかった。
「や……大丈夫じゃない、けど……大丈夫」
フレッドが困った顔で笑う。
均整の取れた、しなやかで引き締まった身体が、ほの暗い部屋に浮かび上がる。
「綺麗……鍛えていらっしゃるの?」
思わずそうつぶやいてから、オリヴィアは恥ずかしくなって顔を逸らした。
「これでもアルバーンの人間だからね、鍛えるのが習慣にはなっているよ。だけど僕は落ちこぼれだから、この身体には実戦の傷が一つもない。アルバーンの恥さ」
「どうして? あなたは雨の領地で私を助けてくれたもの。収穫祭のときも。剣を持って戦うだけが騎士ではないでしょう?それに宰相補佐官として努力しておられるもの。フレッド様は充分……素敵です」
彼女はぎゅっとフレッドの背に腕を回した。
「それに、たとえあなたが格好悪くても……好きと言ったはずです。だから全部……あなたの弱さも見せて」
「オリヴィア」
フレッドがくしゃりと笑い、彼女の耳に唇を寄せた。
「きみは僕のものだ。離さないから覚悟していて」
発しようとした返事は音にならなかった。
抱きしめられ、やわらかな感触に全て飲みこまれてしまったから。
フレッドが指を絡めたまま、なだめるように彼女の額に口づける。額から頬へ、頬から唇へ。
彼女はフレッドの手に抗わず、ベッドに身を沈めた。
「オリヴィア、僕を見て。大丈夫かい?」
覆いかぶさった彼が、オリヴィアをじっと見下ろす。不思議ともう恐怖も嫌悪も覚えなかった。
「や……大丈夫じゃない、けど……大丈夫」
フレッドが困った顔で笑う。
均整の取れた、しなやかで引き締まった身体が、ほの暗い部屋に浮かび上がる。
「綺麗……鍛えていらっしゃるの?」
思わずそうつぶやいてから、オリヴィアは恥ずかしくなって顔を逸らした。
「これでもアルバーンの人間だからね、鍛えるのが習慣にはなっているよ。だけど僕は落ちこぼれだから、この身体には実戦の傷が一つもない。アルバーンの恥さ」
「どうして? あなたは雨の領地で私を助けてくれたもの。収穫祭のときも。剣を持って戦うだけが騎士ではないでしょう?それに宰相補佐官として努力しておられるもの。フレッド様は充分……素敵です」
彼女はぎゅっとフレッドの背に腕を回した。
「それに、たとえあなたが格好悪くても……好きと言ったはずです。だから全部……あなたの弱さも見せて」
「オリヴィア」
フレッドがくしゃりと笑い、彼女の耳に唇を寄せた。
「きみは僕のものだ。離さないから覚悟していて」
発しようとした返事は音にならなかった。
抱きしめられ、やわらかな感触に全て飲みこまれてしまったから。