その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
幸い出席者にはさっきのことを気づかれずに済んだようだ。広間まできてようやくオリヴィアは息を吐いた。
手の甲で何度も唇をこする。腫れぼったく熱を持ったそれが、ひりひりと痛んだ。胸の動悸がおさまらない。
すぐにでもこの場から立ち去りたい。
胸を押さえながら広場を見渡すと、タイミング良くこちらへ近づいてくる父親と目が合った。これで挨拶とかいうものを済ませれば、退出できる。
彼女はほっとして父親に声をかけようとしかけ、蒼白になった。
父親とともに彼女の前までやって来たのは、今しがた二度と会いたくないと願ったばかりの男だった。
「オリヴィア、そこにいたのか。こちらはアルバーン卿の次男のフレッドだ。挨拶しなさい。お前の結婚相手だ。お前もきっと気に入るだろう」
「フレッド・アルバーンと申します。このようにお美しいご令嬢を妻に迎えられるとは光栄です」
その男、フレッドは憎らしいほどの笑みを彼女に向けると、優雅な仕草で頭を下げた。
手の甲で何度も唇をこする。腫れぼったく熱を持ったそれが、ひりひりと痛んだ。胸の動悸がおさまらない。
すぐにでもこの場から立ち去りたい。
胸を押さえながら広場を見渡すと、タイミング良くこちらへ近づいてくる父親と目が合った。これで挨拶とかいうものを済ませれば、退出できる。
彼女はほっとして父親に声をかけようとしかけ、蒼白になった。
父親とともに彼女の前までやって来たのは、今しがた二度と会いたくないと願ったばかりの男だった。
「オリヴィア、そこにいたのか。こちらはアルバーン卿の次男のフレッドだ。挨拶しなさい。お前の結婚相手だ。お前もきっと気に入るだろう」
「フレッド・アルバーンと申します。このようにお美しいご令嬢を妻に迎えられるとは光栄です」
その男、フレッドは憎らしいほどの笑みを彼女に向けると、優雅な仕草で頭を下げた。