その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
その様子をどう思ったのか、フレッドが淋しげに笑った。
「きみも騎士の妻の方が良かった?」
きみも、というと彼に騎士になって欲しかった女性でもいたのだろうか。
「そんなこと、全然……思いもしませんでした。だってフレッド様は充分……」
「充分、なに?」
素敵だと伝えようとして、喉につかえた。騎士だろうと何だろうと、彼がそれを恥じていなければいいのではないだろうか。そう思ったけど、伝えようとすると変に意識してしまって上手くいかない。
フレッドが身を乗り出して彼女の顔を覗きこむ。
「……サイラス様と出会えて、フレッド様は変わられたのですね」
「そうだね。鬱屈していたときに救われたのは確かだな」
「フレッド様が笑っていられるのなら、それがフレッド様の道なんだと……思います」
彼の切れ長の目が瞬いて、きらきらと光を散らす星のようだとオリヴィアはふと思った。
「ありがとう」
「私はなにもしていませんよ」
「したよ。やっぱり好きだな」
「ひぅっ」
「なに、その叫び声は。初めて聞いたよ」
フレッドがくつくつと笑う。相変わらず人の反応を楽しんでいるように見える。人が悪い。
オリヴィアは憤慨しそうになったけれど、その屈託のない笑みを見ていたら心臓が飛び出そうになったこともまあいいかと思えた。
もっと笑って欲しい。
不意に湧き上がった強い感情に驚き、オリヴィアは押し黙った。
「きみも騎士の妻の方が良かった?」
きみも、というと彼に騎士になって欲しかった女性でもいたのだろうか。
「そんなこと、全然……思いもしませんでした。だってフレッド様は充分……」
「充分、なに?」
素敵だと伝えようとして、喉につかえた。騎士だろうと何だろうと、彼がそれを恥じていなければいいのではないだろうか。そう思ったけど、伝えようとすると変に意識してしまって上手くいかない。
フレッドが身を乗り出して彼女の顔を覗きこむ。
「……サイラス様と出会えて、フレッド様は変わられたのですね」
「そうだね。鬱屈していたときに救われたのは確かだな」
「フレッド様が笑っていられるのなら、それがフレッド様の道なんだと……思います」
彼の切れ長の目が瞬いて、きらきらと光を散らす星のようだとオリヴィアはふと思った。
「ありがとう」
「私はなにもしていませんよ」
「したよ。やっぱり好きだな」
「ひぅっ」
「なに、その叫び声は。初めて聞いたよ」
フレッドがくつくつと笑う。相変わらず人の反応を楽しんでいるように見える。人が悪い。
オリヴィアは憤慨しそうになったけれど、その屈託のない笑みを見ていたら心臓が飛び出そうになったこともまあいいかと思えた。
もっと笑って欲しい。
不意に湧き上がった強い感情に驚き、オリヴィアは押し黙った。