その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
「あら、オリヴィア。熱でもあるの? 今日は早く寝た方がいいわ」
「違うの、大丈夫よ」
オリヴィアは取りつくろうように、蜂蜜をひと匙すくう。とろりと優しくも清々しい甘味が口に広がる。まるであの日の口づけみたいな……。
「フレッド様と会えなくて淋しくなった?」
持ち上げようとしたティーカップが、耳障りな金属音を立ててソーサーに当たった。幸い零れずに済んで胸を撫で下ろす。
「おば様!」
「あら、あなたたち、今年の社交界の話題を引っさらっていたもの。ラッセルがアルバーン伯爵家の次男にあなたを嫁がせると聞いたときには、ちょっと複雑でしたけどね。でもどうやら上手くいっているみたいね」
マルヴェラがころころと笑うので、彼女はますます身の置きどころがなくなる。
「視察が終われば会いに行けばいいのよ」
「そんな、会う理由もないし……会いたいかと言われるとそうでもないような」
「会えなくてぼんやりしていたのに?」
マルヴェラが澄ました顔でクッキーを口にする。
「違うの、大丈夫よ」
オリヴィアは取りつくろうように、蜂蜜をひと匙すくう。とろりと優しくも清々しい甘味が口に広がる。まるであの日の口づけみたいな……。
「フレッド様と会えなくて淋しくなった?」
持ち上げようとしたティーカップが、耳障りな金属音を立ててソーサーに当たった。幸い零れずに済んで胸を撫で下ろす。
「おば様!」
「あら、あなたたち、今年の社交界の話題を引っさらっていたもの。ラッセルがアルバーン伯爵家の次男にあなたを嫁がせると聞いたときには、ちょっと複雑でしたけどね。でもどうやら上手くいっているみたいね」
マルヴェラがころころと笑うので、彼女はますます身の置きどころがなくなる。
「視察が終われば会いに行けばいいのよ」
「そんな、会う理由もないし……会いたいかと言われるとそうでもないような」
「会えなくてぼんやりしていたのに?」
マルヴェラが澄ました顔でクッキーを口にする。