その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
「おば様! やめてったら」
「何にせよ、あなたが殿方に興味を持つようになってくれて安心したわ」

 このおば──正確には父の従姉なのでおばとは言わないけれど──は、オリヴィアの過去を知っている。これまで心配してくれていたのだろうと思うと、胸がつまった。まだ男性への恐怖を克服したのではないけれど、マルヴェラが安心してくれるなら訂正しない方がいいのだろう。

「……時々、意地悪なことをおっしゃるけれど、優しい方です」
「良かったわね、そう思えるお相手と結婚できて」

 マルヴェラが笑って紅茶を口にする。

 白い結婚を賭けた攻防中だとは口にできずに、彼女はぎこちなく微笑み返した。
 一口齧ったクッキーはアーモンドがざらざらとして、のみ下すのにやけに時間がかかった。
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