その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
一月も半ばを過ぎた頃、王都からの視察団はフリークス領の屋敷に到着した。
表向きは視察であるが、主目的は辺境伯領の監査である。この時期の監査はあらぬ噂を呼ぶため、定例の駐屯地の査察に乗じて視察を行うことになった。
もちろんそのことは、フリークス家の者には伝えられていない。
フレッドはずらりと続く団の後方から、屋敷の前でフリークス卿らとともに国王に歓迎の意を表する彼女に見入った。
今日の彼女は、冬の冷たい空のようなアイスブルーのドレスだ。ごくシンプルだが、彼女の動きに合わせてときおりちらちらと光が浮かぶ。華美な飾りはないのにむしろ洗練された雰囲気をまとっている。
どこからかほうと感嘆のため息が聞こえてきて辺りをうかがうと、男どもが熱のこもった視線を隠しもせず彼女に向けていた。フレッドが目をすがめて牽制すると、彼らは気まずげに視線を逸らした。
彼女がフレッドに気づいた。
強張っていた表情が驚きに瞬き、それからほどけるように笑みが咲く。
他の男がいる前で自分に笑みが向けられたことに対する優越感と、人前で見せるなと思う独占欲がない交ぜになって、口もとがゆるんだ。とはいえフレッドは末席である。実際に彼女と話をする機会に恵まれたのは、歓迎の晩餐が終わってからだった。
表向きは視察であるが、主目的は辺境伯領の監査である。この時期の監査はあらぬ噂を呼ぶため、定例の駐屯地の査察に乗じて視察を行うことになった。
もちろんそのことは、フリークス家の者には伝えられていない。
フレッドはずらりと続く団の後方から、屋敷の前でフリークス卿らとともに国王に歓迎の意を表する彼女に見入った。
今日の彼女は、冬の冷たい空のようなアイスブルーのドレスだ。ごくシンプルだが、彼女の動きに合わせてときおりちらちらと光が浮かぶ。華美な飾りはないのにむしろ洗練された雰囲気をまとっている。
どこからかほうと感嘆のため息が聞こえてきて辺りをうかがうと、男どもが熱のこもった視線を隠しもせず彼女に向けていた。フレッドが目をすがめて牽制すると、彼らは気まずげに視線を逸らした。
彼女がフレッドに気づいた。
強張っていた表情が驚きに瞬き、それからほどけるように笑みが咲く。
他の男がいる前で自分に笑みが向けられたことに対する優越感と、人前で見せるなと思う独占欲がない交ぜになって、口もとがゆるんだ。とはいえフレッドは末席である。実際に彼女と話をする機会に恵まれたのは、歓迎の晩餐が終わってからだった。