その身体に触れたら、負け ~いじわる貴公子は一途な婚約者~ *10/26番外編
「それはお前たちに言う事ではない。爵位は一時的に取り上げられるだけだ。アラン、お前は学校で良く励みなさい。お前が学校を出るまでは、グレアム公が後見人になってくださる。生活の心配はしなくて良い」
「お父様はどうなるのですか!?」

 話を切り上げようとする父親に、オリヴィアは駆け寄った。

「さあ、わからん。相当長く牢に入れられることになるかもしれん。戻る場所ももうないだろう」

 彼女は返す言葉を失った。代わりにアランが父親を問いつめる。

「姉さんは? ここが人の手に渡ったら姉さんはどこに行くんだよ!?」
「オリヴィアはグレアム公爵の養女にしていただくことで話がついている。いいか、準備が整い次第ここを出ろ。マルヴェラはお前を悪いようにはしないだろう」

「では……婚約は」
「婚約は取り消しだ」

 オリヴィアがよろめくのを、アランがとっさに支える。

「マルヴェラなら最善の嫁ぎ先を見つけてくれるだろう。あの家なら婿をもらうこともありえるな」
「そんな……!」

 罪人の娘では結婚に支障がでる。だからこそ公爵家の養女にするという手を取ったのだとわからないほど子供ではない。けれど、だからと言って全て飲みこんで従えるほど大人でもない。

「今となってはメリットが無くなった。いいか、これは決定事項だ。一切の意見は許さない」
「なんだよ……! なんでだよ!」

 アランが書斎の書物机に拳を打ちつける。机上の書類がはたりと揺れて落ちた。
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