overdrive
「自分でもよくわからないけど、きれいな色は透き通って見えるの。澄んでるっていうのかな、純粋な感じ?」

「その感覚、君のデザインに表れてるな。そして、君自身にも」

「……えっ?」


どういう意味だろうと彼を見返すが、不意に手を取られてドキッとする。


「崖の途中まで階段が下りてるよ。せっかくだから、行ってみるか」

「あ、はいっ」


今気付いたのだが、手を繋ぐのは久しぶりだった。

付き合い始めの頃は、私のほうがやたらとべたべたくっついて、よく彼を困らせたもの。デートの時は手を繋ぐのはもちろん、腕を絡ませたり、抱きついたりした。

それがいつからか、子供みたいにまとわりつくことが恥ずかしいと思うようになった。

年齢を重ねたせいだろうか?

久しぶりの上に、彼のほうから触れてきたものだからドキッとした。それにしても彼とは恋人で、いわゆる深い仲なのに、どうしてここまで反応するのか。


我ながら不思議な現象だけれど、予期せぬ触れ合いがなんだか嬉しい。

私も司さんの手をそっと握り返し、少しだけもたれるようにして階段を下りていった。
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