課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。

 ―――今から一週間前の夜

 いつものように仕事から一人暮らしの自宅に帰って、風呂を済ませ、大好きなスルメイカを炙りつつ、缶ビールをプシュっと開けたその時、テーブルの上のスマホがなった。
 見ると伯母の名前が。

 なにかしら、こんな時間に珍しい…

 そう思って電話に出たのが間違いだった。

 「元気にしてる?美弥ちゃん。」

 話し始めた彼女は挨拶もそこそこに、一気に用件を捲し立てた。

 「じゃあ、そのつもりで。」

 そう言って、私に一度も口を挟ませることなく、一方的に通話を終了してしまった。

 伯母の用件とは、一言で言うと『お見合い』。
 三十に手が届きそうなのに、浮いた話の一つもない私のことを心配してなのか、はたまた、彼女の元来のお節介な性分からなのか、彼女は私にとって良いと思う相手を見つけてきたらしい。

 慌てて実家に電話すると、父は自分にとって姉である伯母には逆らいにくいようで、「とりあえず会ってみるだけでも」と逆に伯母の肩を持つような発言をした。



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