課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。

 籍を入れて夫婦としての生活も始めたけれど、私たちが職場では『上司と部下』のまま通していて、周りには結婚の報告をしていない。

 と、言うのも、雄一郎さんが折を見て自分が報告するのでしばらくはこのままにしたい、と私に『お願い』してきたから、彼にお任せすることにしたのだ。
 事務手続きは自分たちで出来てしまうから誰にも見られることはないし、周りの目を気にしなくていいから私も気が楽だ。

 そんなこんなで、年末は二十七日まで働いてから年末年始の休みに入った。

 休みの間に私の実家に入籍の報告には行った。
  
 私たちの報告を聞いた父はすっかり結婚についての異論はなくなったようで、雄一郎さんと日本酒を酌み交わしながら嬉しそうにニコニコと会話を弾ませていた。
 そんな父の様子を見て、「結局父は私のことが心配だったんだな」と悟った。

 私の実家に顔を出した以外は、マンションで二人でのんびりと過ごした。
 私の作ったおせち料理を「美味い美味い」と絶賛しながら食べてくれたり、近くの神社に初詣でに行ったりしながら、新婚すぐのお正月を楽しんだ。

 ずっと家に二人でいるからか雄一郎さんは常にニコニコと機嫌良く、私には思いもよらぬタイミングでスイッチが入るらしく、突然彼の甘い攻撃に襲われたりするのはちょっと困るけど、それすらも甘くて幸せだった。
 
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