課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 「雄一郎さん、ココ職場!!」

 慌てて降りようとした私の両側に腕を付き、彼はそのまま覆い被さるように私の唇を塞いだ。

 「んっ、んん~~!」

 私の声を封じるように、寸分の隙間もなく唇を埋め尽くす。

 誰か来たらどうするの!!

 他の社員が来る前に彼を止めたい一心で、私は足をバタつかせ、空いている手で彼の胸を叩いた。
 私の必死の抗議に、雄一郎さんは私の上唇と下唇をペロリと舐めてから、名残惜しそうに私の唇を解放した。
 
 まだ目前にある彼の顔を睨みつける。
 流石に悪い、と思ったのか彼が一瞬たじろいだ。その隙に彼のデスクから素早く降りて、彼から距離を取る。

 「職場でなんてことするの!?」

 「朝早いからまだ誰も来ないだろ。」
 
 「そういう問題じゃありません!」

 「…すまん。でも可愛すぎる美弥子も悪い。」

 ずれてしまった眼鏡を直しながらきつく睨みつけると、彼は「でも次はなるべく我慢する」と反省しているのかどうか怪しい謝罪を口にした。
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