課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
一月の終わり、【サカキテック】を去ることになった私と雄一郎さんは、朝礼で課内のみんなに挨拶をした。
課長デスクの前に二人で並び、オフィスのみんなの方に向いて立つ。
私達二人とも今日でこの職場を去る為、一緒に並んでいても誰も疑問にすら思っていないようだ。
「みんな、本日を以って異動となった柴原と俺から挨拶がある。まず、柴原からだ。」
斜め上から視線を寄越した雄一郎さんに、頷いてから口を開いた。
「これまで六年以上お世話になったこの総務課を去るのは、思っていた以上に寂しいです。ですが、新しい職場に行き、新しい仕事にこれまで以上に励みたいと思っています。皆様、今まで本当にありがとうございました。」
パチパチパチと拍手が起こる中、私は頭を下げて礼をした。
その拍手が静まった後、私の隣で雄一郎さんが話し出した。
「ここに来てから三年間、頼りない上司だった俺を今まで助けてくれたみんなには感謝している。新しく赴任される課長を助けてこれまで以上に頑張ってほしい。あと、これは個人的なことなのだが、」
一旦そこで言葉を切った雄一郎さんは、私の方を一瞬横目で見た後、再び視線を正面に戻して良く通る声で話しを続けた。
「俺はここにいる柴原美弥子と先日入籍した。」
ザワっとオフィスがどよめいた。
そんなどよめきに負けずに、雄一郎さんはしっかりとした声を出した。
「だが、今回の異動とそれは関係ない。【榊コーポレーション】の上の方で決められたことに俺たちは従っただけだ。柴原はあちらでも旧姓のまま仕事を続ける。そういうことなので、これからも何かあったらよろしく頼む。以上だ。」
二人で一礼してから、それぞれのデスクに戻る。
そんな私たちの落ち着いた様子とは反対に、オフィスのざわめきは少しの間続いたけれど、始業時間が始まったせいで、各部署からかかってくる電話や申請受付に追われているうちに、すっかりいつもの雰囲気に戻っていた。
課長デスクの前に二人で並び、オフィスのみんなの方に向いて立つ。
私達二人とも今日でこの職場を去る為、一緒に並んでいても誰も疑問にすら思っていないようだ。
「みんな、本日を以って異動となった柴原と俺から挨拶がある。まず、柴原からだ。」
斜め上から視線を寄越した雄一郎さんに、頷いてから口を開いた。
「これまで六年以上お世話になったこの総務課を去るのは、思っていた以上に寂しいです。ですが、新しい職場に行き、新しい仕事にこれまで以上に励みたいと思っています。皆様、今まで本当にありがとうございました。」
パチパチパチと拍手が起こる中、私は頭を下げて礼をした。
その拍手が静まった後、私の隣で雄一郎さんが話し出した。
「ここに来てから三年間、頼りない上司だった俺を今まで助けてくれたみんなには感謝している。新しく赴任される課長を助けてこれまで以上に頑張ってほしい。あと、これは個人的なことなのだが、」
一旦そこで言葉を切った雄一郎さんは、私の方を一瞬横目で見た後、再び視線を正面に戻して良く通る声で話しを続けた。
「俺はここにいる柴原美弥子と先日入籍した。」
ザワっとオフィスがどよめいた。
そんなどよめきに負けずに、雄一郎さんはしっかりとした声を出した。
「だが、今回の異動とそれは関係ない。【榊コーポレーション】の上の方で決められたことに俺たちは従っただけだ。柴原はあちらでも旧姓のまま仕事を続ける。そういうことなので、これからも何かあったらよろしく頼む。以上だ。」
二人で一礼してから、それぞれのデスクに戻る。
そんな私たちの落ち着いた様子とは反対に、オフィスのざわめきは少しの間続いたけれど、始業時間が始まったせいで、各部署からかかってくる電話や申請受付に追われているうちに、すっかりいつもの雰囲気に戻っていた。